メインコンテンツにある「科学の花園」。
科学に対する興味は尽きないんですが、なかなか調べてまとめたりということは労力がいるものです。
そこで、トップページの日々のコラムを書いている欄に、思いつきやちょっとしたニュース、覚え書きなどを書いていくことにしました。
名付けて「科学の一輪挿し」。いずれこの中から、「花園」になっていく花もあるでしょう。
2006/11/24
このまえ見つけたニュース。
「戦うのはカブト虫でなくゾウリムシ 微生物ゲーム誕生」
これいいなぁ。ほしい。ネーミングもイカす。「単細胞遊戯マイクロ王!」
微生物を専門に展示する山口県岩国市の
「市立ミクロ生物館」が作ったらしいのだが、この博物館もいい。
電話ボックスみたいな大きさの建屋で、顕微鏡一台置いてあるだけみたいなとこだったらもっといいけど、さすがにそんなことはないようだ。
特に、ここの「お土産紹介」は必見! 顕微鏡セット、買おうかなぁ…
2006/10/20
最近、テレビCMなどでやたらと聞かれる「白金ナノコロイド」。
健康食品、化粧水など、健康・美容によいと喧伝されている。これってなんなの?
学生時代に白金を主な研究材料にしていた身としては、非常に気になる。調べてみた。
白金やパラジウムは、有機化学の分野で還元触媒としてよく用いられる。
この還元作用が、生体にも有効であるとの話のようだ。
老化や病態に、生体内の過酸化物が影響しているというのは、以前からさまざまな報告がある。
「活性酸素」とか「酸化ストレス」とかいわれるやつだ。
だから、還元的環境が身体にいいとかいって、
ビタミンCやビタミンE、アスタキサンチン、大豆イソフラボンなどのフラボノイドが、健康食品として売られている。
まあ、これらの物質は、いずれも通常の食品から抽出精製されたものでもあるし、それなりの安全性もあるのだろう。
もちろん、過ぎたるは及ばざるが如し。なんでも摂り過ぎては害になるので、ほどほどが肝要ではあるが。
さて、冒頭の白金ナノコロイドである。白金自体は還元作用があるので、確かに活性酸素除去効果もあるのだろう。
また、いわゆるナノコロイドのコロイド粒子は2〜3nmであるので、経口投与しても消化管から十分吸収されうる。
皮膚バリアもかいくぐる可能性もありうる話だ。
動物実験などでも、多少マユツバのものもあるが、効果は認められているようだ。
問題は生体に吸収された、その後である。
白金はいうまでもなく、生体にとって異物である。役割を終えたら排出されなければならない。
通常は、5nm以下の粒子であれば、腎を通って尿中に排出される。
実際に、白金ナノコロイドを経口投与すると、白金の尿中排泄が確認されるそうだ。
じゃあ、問題ないじゃん、というなかれ。実はそうでもないのだ。
これは、いわゆる「ナノ粒子」全般に言えることなのだが、
「ナノテクノロジー」と持ち上げられる一方で、ナノ粒子の安全性は完全には確立していない。
普通の固体粒子なら、生体に吸収されなければ安全とか、こういうルートで排出されるから安全とかいえるかもしれないが、
ナノ粒子はこれまでそのあたりを深くつっこんで研究されたことがない。
血液脳関門を通過する(すなわち、脳へ達することができる)とか、妊婦から胎児へ移行することができるとか、
いろいろとよくない話もちらほら聞かれる。
確かに、金や白金は食品に入れても法的にはいいことになっているし、
金箔入りの日本酒飲んでも、プラチナの指輪を飲み込んでしまっても、大した健康被害はない。
しかし、この世の物質はすべて、ナノ粒子になると、その振る舞いが大きく異なってくるのだ。
固体の白金と白金ナノコロイドは、少なくとも生体にとっては別の物質と思ったほうがいい。
プラチナの名前にだまされ、なんとなくきれいになれそうに思って試そうとしているなら、もう少し研究結果を待った方がいいだろう。
健康被害が出てから、「当時の科学水準では危険性が明確でなかった」とかいう話、以前にあちらこちらで見たことがあるでしょ?
2006/03/14
4/17から4/23まで、「科学技術週間」というのがあるんだそうな。
制定は昭和35年と古いが、いろいろなイベントが催されるとのこと。
そして今年は、文部科学省が、「サイエンス・ウォーカー」というフリーペーパーを作って配布するらしい。
デートなら科学関連施設へ、ということで、TOKYO WALKERなどに綴じ込んだりもする。なかなかいい考えだと思う。
若年層の「理科離れ」が指摘されて久しいが、だからどうするか、という対策はあまり見えてこなかったし。
さて、科学技術週間のWEBサイトに行くと、
「一家に1枚周期表」というリンクがある。これがなかなかいい。
まあ、今まで科学技術になんの縁もなかったような一般家庭に対して、
いきなり「一家に1枚周期表」と言われても、おそらくたいていの人はたじろぐだけだろうが、
ここにある周期表はけっこう工夫されていて、かなりいいアイデアだと思う。
周期表というのは物質の構成単位である元素を、原子番号順に並べた表のことだ。
大学にいた頃、隣の研究室前の廊下に、各元素の実物写真が載っている周期表が貼ってあって、ほしくてほしくてしょうがなかった。
今回の科学技術週間のWEBサイトには、その「写真入り周期表」のPDFファイルがアップされているのである。とてもうれしい。
大学のときに見た、元素そのものの写真というわけではないが、各元素の応用分野が写真入りで解説されている。
人体、地殻、地球、宇宙の元素構成比も円グラフで描いてある。見ているだけでおもしろい。
周期表に書いてあるコピーもなかなかいい。「自然も暮らしもすべて元素記号で書かれている」
みなさん、ぜひダウンロードして、カラー印刷して家の壁に貼りましょう。
しかし、ほんとに科学の普及を考えるなら、この周期表を新聞のまんなかのページの見開き全面に、カラーで入れるべきじゃないだろうか。
2006/02/14
太陽系の惑星は水金地火木土天海冥の9惑星とされているが、
最近、太陽の周りを公転する新発見の天体が冥王星よりも大きいことがわかった。
この天体は2003UB313と呼ばれているもので、公転周期は557年の楕円軌道で、
現在は太陽から97天文単位(約145億キロ)にある。
ドイツ・ボン大学の研究グループが、
スペインにある直径30メートルのパラボラアンテナを持つ電波望遠鏡で2005年8月に観測した結果から、
2003UB313の直径が約3000キロ(誤差400キロ)であると確認された。
冥王星の直径は約2400キロなので、誤差を考慮しても確実に2003UB313の方が大きいことになる。
では、この2003UB313は太陽系の第10番目の惑星なのか?ということになるのだが、
どうやらそうはならない可能性が高いようだ。
惑星の定義が結構あいまいで、大きさだけで決まるものでもないらしい。
そもそも、冥王星は惑星でない、とする議論はかなり以前から少なからずあったのだ。
冥王星の発見は1930年2月、結構最近、である。当時は地球くらいの大きさと推測され、
特に議論されるまでもなく”太陽系第9番目の”惑星とされた。
しかし、その後の観測から、冥王星の大きさはどんどん小さいものへと修正され、ついには月よりも小さくなってしまった。
そんなこともあって、冥王星の惑星としての立場はかなりあやうい状態になってきている。
ところで、むかし暗記した水金地火木土天海冥の呪文(?)であるが、英語でも似たような暗記法があるそうだ。
"My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas."
「とても教養のある私の母は、私たちにピザ9枚を出してくれました」 …やさしいお母さんである。
各単語の頭文字が、惑星の頭文字(Mercury,Venus,Earth,Mars,Jupiter,Saturn,Uranus,Neptune,Pluto)に対応している。
しかし、もし冥王星が惑星から除外されてしまったら…。
"My Very Educated Mother Just Served Us Nothing."
「とても教養のある私の母は、私たちになにも出してくれませんでした」 …いっきに厳しいお母さんに!
9枚のピザのためにも、冥王星にはぜひ踏んばってもらいたい。
2006/01/30
世の中にはいろんなことを研究している人がいるもので、
耳垢がパサパサタイプになるかネットリタイプになるかということが、どうやって決まるかを研究している人もいる。
そしてそれが、未来の医療に繋がる可能性があるというのだから驚きだ。
耳垢の乾・湿が遺伝で決まるというのはかなり昔からわかっていた。
また、日本人の7割以上が乾燥タイプ、白人・黒人は99%くらいが湿潤タイプと、民族でも大きく差があることもわかっていた。
しかし、これがどういう遺伝子によるものかはわかっていなかった。
長崎県在住の日本人126人の耳あかの型を調査した結果、
それが、「ABCC11」と呼ばれる遺伝子DNAの特定の塩基(538番目)が、アデニン(A)かグアニン(G)かによって決定することが判明した。
126人中、乾燥タイプは88人で、そのうち87人が、両親の両方からAを受け継いでいる「AA型」だった。
湿潤タイプは38人で、全員が両親のいずれか片方からGを受け継いだ「GA型」か、両方から受け継いだ「GG型」だった。
すなわち、ABCC11遺伝子の538番目の塩基について、両親の少なくとも片方からGを受け継ぐと、耳垢が湿潤タイプになるのである。
また、この遺伝子はもともとG型が一般的だったが、約2万年前にシベリアのあたりにA型の突然変異が出現し、
その子孫が世界に広がったと推測されている。
このような1塩基のみの変異を、SNPs(スニップス;Single Nucleotide Polymorphism;一塩基多型)と呼ぶ。
SNPsは、病気に対する罹りやすさや薬の効きやすさなどの個人差に反映されるが、
今回のように、外見的な差異に現れることが示されたのは世界初のことである。
耳垢に影響を与えるABCC11遺伝子も、薬の効きやすさに影響があるとされているので、
将来的には、耳垢の乾・湿タイプにより、薬の種類や投与量を調整する日がくるかもしれない。
2005/03/15
神奈川県自然環境保全センターによると、3月9日のスギ花粉の飛散量が、2001年の測定開始以来の最高値を記録したらしい。
その数、1日当たり3844個/平方センチ。昨年のシーズン合計値801個/平方センチの約5倍である。
一年分の5倍というだけで、なんだかもう既にすごそうであるが、更に検討してみよう。
スギ花粉の大きさは、直径約30ミクロン。3844個の花粉が一直線に並ぶと、11.532センチ。もう立派に肉眼で観察できる。
この量の花粉が、仮に日本全国で飛散したとする。日本の国土は38万平方キロなので、総飛散個数は1京4600兆個。
日本の人口を1億2千万人とすると、ひとりあたり約120億個の花粉を一日で吸い込むことになる。
ヒトの呼吸は安静時で1分間に約15回。一日で21600回だから、1回の呼吸あたり、約5万個の花粉を吸い込んでいるのだ。
呼吸1回あたりの体積は500mL、要する時間は4秒だから、ヒトは空気500mLをだいたい2秒間で吸って、2秒間で吐いていることになる。
鼻の穴の面積を左右両方で1平方センチとすると、1秒間に2万5千個の花粉が、時速9キロのスピードで鼻から飛び込んでいるのである。
どうです?なんだかむずむずしてきませんか?
2004/11/21
かなり以前に、遺伝子組替えのメダカの話をここに書いたが、やはり遺伝子組み替えの代名詞といえば「ダイズ」だろう。
スーパーに行けば、「遺伝子組み替えダイズ不使用」の豆腐やら納豆やらが氾濫している。
いや、遺伝子組み替えダイズ使用の食品にはまずお目にかかれない。
日本のダイズ自給率は26%、輸入ダイズの70%はアメリカ産だそうである。
すなわち、日本国内のダイズの約52%がアメリカ産ということになる。
ところが、アメリカではダイズの80%が遺伝子組替えダイズであるという。
近所に売っている「遺伝子組み替えダイズ不使用」の食品、どこまで信用できるのだろうか。
ところで、大豆といえば、におわない納豆、というのが売っている。金の粒食べよ〜♪の「におわなっとう」だ。
納豆のにおいの原因物質は、イソ酪酸、イソ吉草酸、2-メチル酪酸などの短鎖分岐脂肪酸とされる。
従って、この分子を合成する酵素がないか、もしくは働かないような納豆菌を使えば、
納豆特有のにおいが弱くなるだろうと考えて研究した人たちがいた。
そして、遺伝子組み換えでこの酵素を破壊した納豆菌を作製したところ、におわない納豆ができたのだという。
ところが、巷は遺伝子組み替えに異常なまでの拒否反応で溢れかえり、
こんな商品は売れないどころか、徒に反対運動を刺激し、会社経営を危うくするだけであろうことは目に見えている。
そこで、遺伝子組換えではなく、自然に生じた数多くの突然変異の納豆菌から、
この酵素が働かない菌を苦労して見つけてきて、これを大量に増やして使って商品化したらしい。
遺伝子組み替え体と突然変異体。どこが違うのだろうか? この二者、科学的にはほとんど同一と言ってよい。違うのは顧客の反応だけ。
ここまで研究開発のコストをかけて、消費者の非科学的な注文に答えなければならない。そんな国が名乗る「科学技術立国」。
理科離れが指摘されている今、まずは国民への科学の適切な啓蒙から着手するべきではなかろうか。
2004/10/14
目を閉じて、自分の後頭部に紙をあて、ひらがなの「あ」を書いてみよう。難なく書けるだろう。
次に、額に紙を当てて書いてみよう。おそらく、たいていの人が、左右逆の、鏡に映った形の「あ」を書くはずだ。
と、ここまでなら、あんまりたいしたことはない。
体の前と後ろで、感覚というか認識というか、そういうものが反転しているんだな、ということだ。
意外といえば意外だが、まあ、予想の範囲内だし、体の中心にその支点があることも感覚的に理解はできる。
しかし次の場合はどうだろう。同じように目を閉じて、手のひらを自分に向けて「あ」と書く。
こんなのは簡単だ。じゃあ、目を閉じて、手のひらを前に向けて書いてみよう。迷うことなく書けるだろうか?
紙を手のひらに貼って、ペンで書いてみるとわかりやすい。左右反転しているだろう。
これはどういうことだろう。反転の中心が、体の中心から手の裏表の中心に移動してしまった。
さらに今度は、目を閉じて、誰かに額に指でアルファベットの「V」を書いてもらおう。
左右対称だから反転した感じはない。次に、ふとももやすねの前面に書いてもらおう。
どうだろう?上下が逆転して感じないだろうか。
身体を腰から折りたたんで覗き込んだときに正立して見えるように感じるのではないだろうか。
前回のこのコラムで、人の脳が光と音の速度の差を知っていて、それを補正しているらしいということを書いた。
今回の例も、人の脳が、その記憶から様々な補正をしていることを示しているといえる。
2004/03/20
光の速度は非常に速く、通常はその速度を知覚する機会はないが、音の速度くらいだといろいろな局面でそれを知覚する機会がある。
例えば、稲光が光ってから何秒後に雷の音が聞こえたから、今の雷は何メートル先に落ちた、などというのがよい例だ。
この知見は、人類の科学的研究を通して理解された事実だが、
最近、生物としてのヒトの、器官としての脳が、音の速度を知っている、という驚くべき報告がなされた。
通常、音は眼に見える動作によって生み出される。例えば、鐘をつくことで鐘の音が生じる。
脳は、聞こえた音(聴覚情報)と見えた映像(視覚情報)を統合処理し、その現象を知覚している。
光は、発生とほぼ同時に眼に到達するが、音は1メートル進むのに約3ミリ秒を要する。
すなわち、1メートル先で鐘がつかれれば、鐘の音はその映像よりも約3ミリ秒遅れて到達するはずである。
ところが、東北大学と産総研の共同研究によると、ヒトは1メートル先で映像に対して3ミリ秒遅れた音は同時に発生したと感じ、
これが10メートル先だと、30ミリ秒遅れても同時であると感じるという。
すなわち、ヒトの脳は、その視覚情報から音の発生している場所までの距離を測定し、
それによって視覚情報と聴覚情報の到達する時間の差を補正していることになる。
40メートルくらいまでは、このような情報補正処理をする機能が働きうるという。
これはヒトの脳に限った機能なのだろうか。水中では音の速度は空気中と大きく異なる。
魚や海棲哺乳類などでは、この機能が違った形で進化・適応しているのだろうか。
2003/11/12
コイわずらいが流行っている。
霞ヶ浦を筆頭に、全国各地でコイの変死の報告が相次いでいる。
その原因は、コイヘルペスウイルスによる感染症だ。
「ヘルペス」とはラテン語で疱疹のことで、もともとはギリシア語の「匍匐(ほふく)」からきた語である。
ヘルペスウイルスは、DNA ウイルスの一種であり、
二本鎖DNAのゲノムと、正20面体のカプシド(タンパク質の殻)、宿主細胞核膜由来のエンベロープ(脂質膜)を持つ。
今回のコイヘルペスウイルスはヒトには感染しないとのことだが、ヒトにはヒトのヘルペスウイルスがある。
ヒトに病原性を示すヘルペスウイルスの代表的なものとしては、
単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、EB ウイルス、サイトメガロウイルスなどがある。
よく知られているものは水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus;VZV)であり、いわゆる「水ぼうそう」の病原体だ。
このウイルスに初めて感染すると、「水ぼうそう」の症状が表れる。
多くは学童期にかかり、このときに免疫を獲得し一生持続するため、水ぼうそうには一生に一度しかかからない。
しかし、一旦感染すると、ウイルスは脊髄の知覚神経節に潜伏し、何らかの理由で抵抗力が低下すると、活動を開始する。
これを回帰発症といい、このときに表れる症状が、「帯状疱疹」である。
帯状疱疹は発疹ができるがだいたい1ヶ月もすれば治る。
本当に怖いのは、治癒後にしばしばみられる「帯状疱疹後神経痛」である。
刺すような痛みが持続的に続き、長い場合は1年以上も続くといわれる。
さて、今回のコイのウイルスは、略称で「KHV」と報道されている。
まさか、と思って調べてみたら、「Koi Herpes Virus」の略だった。Koiって・・・
2003/07/15
遺伝子組み替えで蛍光色を発するメダカが開発され、商品として鑑賞魚市場に出回るらしい。
これまでも遺伝子組み替え生物は、実験動物市場や食品分野では取引されていた。
例えば、ノックアウトマウスがそうである。
ノックアウトマウスとは、遺伝子組み替えにより特定の遺伝子を働かなく(ノックアウト)したマウスのことで、
遺伝子の働きを調べたり、新薬の効果を調べたりするのに利用されている。
例えば、血圧の制御をするような機能を持つ遺伝子をノックアウトして作られた、生まれつき高血圧になるようなマウスは、
薬の高血圧に対する効果判定などに利用される。
また、よく槍玉にあげられる遺伝子組み替え大豆などの農産物は、病虫害や気候変動に強くなるよう改良されたものである。
今や、これらの遺伝子組み替え技術は、我々の生活に深く入り込んでいる。
さて、翻って遺伝子組み替えの光るメダカである。
このメダカは、発光するクラゲの遺伝子を組み込んで、発光物質を産生させるようにしたものということである。
従って、(おそらく)少なくとも医療には貢献しないことは確実だ。
生物学の研究に貢献するかどうかということになると、ややグレーではあるが、
商品として売り出されるということから考えると、技術的には確立された、いわば「簡単な」技術であろうから、
生物学の研究に貢献するとは言いがたいであろう。
繁殖能力がないということなので、水産物としての価値は皆無に等しい。
遺伝子組み替え技術は、これまではあくまでも人類の生活の質的向上を目的に利用されてきた。
しかも、食糧や健康・医療など、生物としての根源的な部分の質的向上に限ってである。
しかし、この発光メダカは、「心を癒す」という謳い文句はあるものの、これまでの遺伝子組み替え生物とは一線を画したものであると思う。
ただ光ることのみを求められるメダカ。
生物としての最も重要な営みである繁殖をも許されないメダカ。
人類は、同じようなものを純粋に人工的に、例えばロボットで、あるいはCGで、現出させることは可能なのである。
生物に、命に、手をかけて作り出す必要は、どこまであるのだろうか。
2003/01/23
後肢にも羽毛を持つ新種の恐竜、ミクロラプトル・グイの発見が報じられている。
そこで、恐竜について、ちょっとまとめてみよう。
恐竜は、中生代、すなわち三畳紀、ジュラ紀、白亜紀に栄えた、爬虫類の竜盤目と鳥盤目からなる動物群である。
恐竜の骨格上の特徴は、後肢の骨の接合部付近に集中している。
大腿骨上部は球状の形の接合部になっていて、腰骨の寛骨口(かんこつこう)にかみ合っている。
足の下部には2つの骨があるが、その外側の腓骨(ひこつ)は、もう一方の頚骨(けいこつ)よりも薄い。
足首は独特で、足の間接部は足首の距骨(きょこつ)と踵骨(しょうこつ)がかかとから下の部分を形成し、
モザイク状の小さな骨からなるその下の中足骨を突き抜けている。
これらが「恐竜」の特徴である。なお、現在生きている鳥類は、恐竜と定義される骨格の特徴の多くをもっている。
恐竜図鑑などには、首長竜、魚竜、翼竜などもしばしば記載されているが、厳密にはこれらは恐竜ではない。
今回の発見で真っ先に思い浮かぶのが、始祖鳥であろう。
始祖鳥(Archaeopteryx)は鳥類に分類されており、今回の発見は、最も始祖鳥に近い恐竜の発見といえる。
さて、恐竜は英語ではDinosauriaであるが、Dinosauriaという言葉は、ギリシャ語に由来する。
"Dinos"は"恐ろしい"、 "Sauros"は"トカゲ"とか"爬虫類"という意味である。
これを日本語にするときに、"竜"の文字を使ったことは、すばらしいの一語につきる。
しかし、Dinosが恐ろしいとは… 通信販売、恐るべし。
2002/10/18
今年日本人が受賞したふたつのノーベル賞といえば、物理学賞と化学賞ですね。
では、そのふたつの受賞技術で、共通項といえば?
答えは「光電子増倍管」です。
物理学賞のカミオカンデで、浜松ホトニクス製の巨大光電子増倍管が使われていることは、
新聞やニュースでも取り上げられていましたね。
スーパーカミオカンデで、光電子増倍管が大量に壊れてしまったのも記憶に新しいところです。
化学賞で話題になった質量分析計でも、光電子増倍管が使われています。
「科学の花園」の「祝・2002年ノーベル化学賞〜質量分析とは何か」にも書きましたが、
飛んでくる分子イオンを検出するのに、光電子増倍管が使われています。
そんなわけで、この「光電子増倍管」というのはなんなのか、という話です。
ある種の金属に光などの電磁波がぶつかると、電子が飛び出してきます。これを「光電効果」と呼びます。
電子はマイナスの電荷を持っていますから、電場をかけると加速されます。つまり、プラスの電気に向かって飛んでいきます。
そこで加速された電子を、ダイノードという電子増倍器にぶつけると、加速で得たエネルギーを使って、電子を2個以上飛び出させることができます。
これを繰り返すと、最初は1個だった電子が、倍倍になっていって、ついには電流として検出できるようになります。
こうして、弱い光を増幅して検出する装置が、光電子増倍管です。
質量分析計では、飛んでくるイオンがぶつかると光を出す「シンチレーター」が使われていて、
イオン→(シンチレーター)→光→(光電子増倍管)→電流として検出しているわけですね。
ところで、この「光電子増倍管」ですが、浜松ホトニクスは世界シェアの90%を占めているそうです。
これはすごいね。カミオカンデは日本が金かけたからノーベル賞とれたのかと思ってたけど、その背景には世界一の技術もあったということですね。